専門薬剤師として、患者さんのため、未来の薬剤師のためにできること
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「専門医療機関連携薬局」の認定薬局を増やすため、新設部署に参入
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本田 「学術情報部とは、薬局や薬剤師の学術的な能力を発揮できる場を拡げるために新たに設けられた部署です。2021年8月に開始された専門医療機関連携薬局という制度があるのですが、数ある薬局の中でも特に高い専門性を持っていないと認定を受けることができません。
現在、全国でも約50薬局しか認定されていないのですが、“当社においても高い専門性を有する薬局をつくる必要がある”という会社の意向があり、そのサポートをするために学術情報部 専門連携薬局推進グループが設立されました」今後30店舗取得、可能であればそれ以上に専門医療機関連携薬局を増やすことを目標としているそうですが、薬局の認定制度にはもうひとつ、その地域に貢献している証である「地域連携薬局」というものがあります。そちらは全国で約600薬局認定されており、数を比較するだけでも、専門医療機関連携薬局の認定を受けるには、かなりハードルが高いことがわかります。
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本田 「専門医療機関連携薬局の認定を受けるには、がんなどの専門的な資格を持った薬剤師が在籍していることが必須条件なので、やはり簡単には認定を受けられないですね。病院でのがん治療の経験または病院での研修を受けている必要があることも、保険薬局としては育成要件が厳しい要因ではないでしょうか。
しかしながら、決して不可能な条件ではありません。日々の薬局での業務なども考慮しながら、1つずつ問題を解決することを通して、当社でも少しずつ認定薬局を増やしていければと思っています」
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本田主任専門薬剤師 日本薬剤師会学術大会での様子
薬剤師という職業に対する意識の変化-
本田 「大学院修了後に総合メディカルに入社したのですが、当時は、専門薬剤師という社内制度も、外部学会の制度も調剤薬局業界にはまだありませんでした。私自身、教育研修制度がしっかりしていて、勤務時間もしっかり決められており、社会人として育っていけそうで、安定していて……。そんなごく一般的な理由から、この会社を選んだのです。
ただ、大学院のときに病棟へ研修に行く機会があったのですが、その際に、今でこそ一般的な『腎機能に応じて、薬の選択や投与量を変えなくてはいけない』という考え方に触れ、薬局薬剤師としての立場からでもアプローチが可能ではないか?と考えたことも、そうごう薬局を選んだきっかけのひとつです」総合メディカルには、充実した新入社員研修や、社内の「ファーマシーフォーラム」という学会、さらには、先輩社員がよき相談相手となり、新入社員の業務面や生活面までをサポートする「ブラザー・シスター制度」などのシステムが多数存在します。本田さんもこの社内制度を足がかりに、薬剤師としての知識と経験を積み重ねていきました。
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本田 「この会社に入社したおかげで、1人でめざすよりもずいぶんと成長できたと感じています。同時に、薬剤師としての志といいますか、めざすものも高い位置になっていきました。入社後4年間は東北エリアの薬局に勤務していたのですが、現在の所属店舗の社内公募(専門薬剤師育成カリキュラム)があり、当時から旗艦薬局として有名な店舗だったので、ここで何か新しいチャレンジがしてみたい!と思い応募した結果、現在に至ります」
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そうごう薬局 天神中央店 内観
入社6年目で味わった挫折、戸惑い、そしてがん患者さんへの想い-
本田 「現在の店舗に異動になって初めて、がん患者さんと関わるようになりました。ただ、はじめはがん患者さんとどのように接していいのかがわからず、応対を避けたり、逃げたりしていたのが正直なところです。がん患者さんのケアは特殊な領域だ、という先入観が自分のなかにあったんですよね。ですが、それは大きな間違いでした。
もしも自分1人だったら、逃げ回っていたままだったかもしれません。が、所属店舗では、がんチームと糖尿病チーム、2つの薬剤師のチームを作って活動しており、私が所属していたがんチームには当時4人のメンバーがいました。チームメンバーに、『しっかり向き合っていこう』と声をかけてもらっているうちに、自然と自分も前向きに取り組めるようになりました」さらに、がん患者さんの応対となると、多くのがん種の病態を知った上で、ガイドラインなどの把握も必要なため、深い知識なしでは患者さんに説明ができません。その点も、本田さんにとって大きな壁となっていたようです。
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本田 「入社して4~5年経験を積み、東北エリアにいたころは教育担当などもしていた手前、新たな学びを得ることに後ろ向きになっていたことは否めません。それまではずっと順調に上昇していたモチベーションが、停滞期に入っていたといいますか……そんな私を、チームのメンバーや薬局長は常にフォローしてくれました」
経験を重ねるほどに、未知なる分野に出会ったり、できないと認めざるを得ない場面に直面したり……。それを乗り越えるためには、新たな勉強しかないと頭ではわかっていても、いざ自分がその立場になったとき、苦しくて嫌だから逃げたい、という思考回路に陥ってしまっていた本田さん。そんな本田さんを、仲間たちが支え、フォローしてくれたおかげで、「このまま逃げてばかりではいけない!」と、心を入れ替えることができたのです。
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本田 「結果、がむしゃらに勉強して、『すべてのがん患者さんを自分が対応しよう!』というくらいの気持ちで臨むようになりました。はじめは知識も少なく、しんどい思いもたくさんありましたが、ちょうどそのころ『かかりつけ薬剤師』という制度がスタートしたんですね。患者さんに名刺をお渡しし、顔と名前を覚えていただき、次からも自分が責任を持って担当する。より一層、責任感が増しますし、勉強も重ねていかなくてはいけません」
患者さんとコミュニケーションをとりながら、足りない部分は調べ、次にお会いしたときにおこたえする。そんな毎日を繰り返すうちに、はじめのころに抱いていたがん患者さんへの誤ったフィルターは、いつしか消え去っていたそうです。
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本田 「いかなる患者さんであっても、人対人として、頭に汗をかきながら取り組んでいくと、病気というのはその人の一部、つまり個性のひとつでしかないということに気づかされました」
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本田主任専門薬剤師 服薬指導中の様子
めざすは、薬剤師のイメージと存在意義を高めること-
本田 「ひとつは、私のように所属店舗へ異動を希望する人を公募し、おおよそ2年のスパンで育成・成長・研修・研鑽を積んでもらうフローを構築すること。外来がん治療認定薬剤師に合格したら、全国各地のがん患者さんが来局される店舗で活躍してもらうことが目的です。もうひとつは、家庭の事情などで異動や転勤ができない人を考慮して、今の配属薬局で学びを深められるような新しいシステムを構築し、動き始めています。
さらに今後のビジョンを申しますと……。薬剤師って、医師と違って具体的なイメージを持っている人が少ないと思うんです。なんとなく高給取りのイメージだけど、実際には何をやっているのかがなかなか可視化されない。おそらく、薬剤師の活動を社会へアウトプットする機会が少ないからだと思います。ドラマの主人公でも、薬剤師って少ないですよね。
だからこそ、今、自分たちがやっていることを世間にアピールして、知ってもらえるようになれば、きっと薬剤師として働く人のやりがいにもつながるのではないかと思います。私が一時抱えていた悩みや不安と同じような状況にいる人にとっても、解決の糸口になるかもしれない。そうなれば、患者さんの役に立つこともできますよね。そのために、社内外での活動をさらに活発化させて、薬剤師という存在意義を高めていきたいです」このように、本田さんが薬剤師業界の意識改革まで見据えるようになった裏には、総合メディカルという会社の体制が影響していたともいえます。薬剤師の専門性を高め、職能を高めるべく新部署を立ち上げる。社員一人ひとりの声に耳を傾け、良き方向へと大胆に舵を取る。そんなビジョンのある会社だからこそ、本田さんの目指す場所はさらに高くなってもいくことでしょう。今後の薬剤師という職業に、期待は募るばかりです。
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